賃貸を利用されている方は引っ越しをされる際、必要となってくるのが壁紙の汚れ・床の傷・壁の穴(原状回復費) などなど…たくさんあると思います。
引っ越し費用だけ準備すればいいのではなく、修繕費も場合によっては準備しておかなければなりません!修繕費については、非常にトラブルが起きやすい場面です。
敷金を払っているから大丈夫ではなく、可能ならば極力少ない金額で抑えておきたいし、出来れば返金もされたいですよね。
今回は、新築などで引っ越しをするのに掛かる今まで住んでいた家の修繕費について書いていこうと思います。
- 原状回復ガイドラインについて
- 民法改正前と後の違い
賃貸借契約
賃貸借契約
当事者の一方が、相手方にある物の使用・収益をさせることを約し、
相手方がこれに対して賃料を支払うことを約束することによって成立する契約
引用元:コトバンク
分かりやすく説明すると、アパートの一室を借りる代わりに賃料を支払う事です。
物件を貸し出す人を「貸主」「賃貸人」と言い、物件を借りる人を「借主」「賃借人」と呼んでいます。
原状回復ガイドラインとは?
退去の際の修繕費を極力少額で済むようにする為に重要になってくるのは、国土交通省が出している源状回復ガイドラインになります。
賃貸住宅における原状回復の費用負担をめぐるトラブルを防止するために作られたものです。
ガイドラインでは、通常生活していく上で壁紙などの経年劣化や損耗する部分については家主(大家)の負担とし、原状回復は以下のように明確されています。
賃借人(住んでいる人)が借りた当時の状況に戻すことではない
賃借人の原状回復範囲は、故意・過失・通常使用する上で度を超えるような損耗・破損を復旧する事を定義しています。
要するに、壁の穴を破ってしまったら、支払わなきゃいけないということです!(経験済み)
また、故意・過失がある場合は、賃借人の住んでいる年数に応じて負担軽減などを求められます。
原状回復ガイドラインでは、法的強制力はありませんが過去発生したトラブルの多くはこの内容に沿って判断された判決となっています!
2020年4月1日から民法改正された
2020年4月1日から民法改正があり曖昧だったルールを明確にする事を目的に、新たに施行されました。
変更点も多く幅広いですが自分達が知ってて良かった部分について書いて行こうと思います。(私達がアパートを退去する際は2020年3月だったため、旧民法が適用された)
アパート等を退去する際、原状回復ガイドラインは個人的に知っておいた方がいいと思います!
旧民法と新民法の適用の違い
2020年4月から民法改正されましたが、全て切り替わった訳ではありません。
具体例
〔例1〕
2020年3月までに契約して入居し再度契約書を取り交わす等をした場合(合意更新)は、新民法が適用されます。それまでは、旧民法が適用されます。
〔例2〕
2020年4月以降に契約した場合、新民法が適用されます。
〔例3〕
契約書の自動更新にて双方に異議がない時は、新民法が適用されます。
〔例4〕
更新について、合意をしていなくても更新したとみなされる(法定更新)場合は、旧民法が適用されます。
法廷更新
双方の意思確認や更新手続きを行わないままでいると法律上自動的に契約が更新されることを指す
違いはこんなものですが、あまり気にしなくても良いと思います!
新民法の方がトラブル回避を目的に制定されているのでトラブルになりにくいメリットがあります。
新民法になって変わったこと
では、旧民法から新民法になった事で何が変わったのか。なるべく簡単に記載していきます。
- 借主の修繕依頼方法の緩和
- 災害発生時の家賃減額制度
- 退去時の原状回復ルール
①借主の修繕依頼方法の緩和
【 借主の修繕費 】
旧民法
何らかのトラブル(災害)などにより窓ガラスが割れてしまった場合や水廻りの水漏れが発生した場合など個人で修理業者に連絡し、修理をすると借主が修繕費を払わなければなりませんでした。
最悪の場合は貸主は建物の改造といって不当に契約解除されることも出来ました。
新民法
「急迫(緊急)の事情」があった場合に個人で修理依頼した際、貸主に請求出来ることが認められるようになりました。ただし、無条件ではなく2つの条件が満たされている時のみ認められます。
〔条件1〕急迫(緊急)の事情がある時
- 窓ガラス破損による、雨水の進入がある
- 防犯上危険であるなど・・・
- 水漏れにて浸水の恐れがあるなど・・・
〔条件2〕借主が貸主に修繕が緊急的に必要と伝えた、あるいは貸主が知った
- 極力電話だけでなく、メールやLINEなどで伝えた事が残るようにしよう
- 修繕する際は、現状の物より高額な物にするのは認められない。
②災害発生時の家賃減額制度
【 災害時の設備不具合などによる家賃減額 】
旧民法
物の倒壊・半壊などの時のみ家賃減額が認められた。
減額までのハードル高いですねー💦
新民法
台風など災害発生時に電気・ガス・水道が使えなくなった場合(借主に責任がない状態)家賃減額が認められるようになりました。
減額率(目安)
〈 計算方法 〉:家賃10万円でガスが一週間使えなくなった場合
ガスの家賃減額割合:10% *家賃10万円なら1万円
・10000円÷30日(月の日数)=333.3円(1日あたりの減額)
・333.3円×(7日(一週間)−3日(免責日数))=1333.3円
1333.3円の減額になります。
図
状況 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
---|---|---|
電気が使えない | 40% | 2日 |
ガスが使えない | 10% | 3日 |
水が使えない | 30% | 3日 |
上記のいずれにも該当しない場合はこちらを参照(トイレ・テレビの使用不可など・・・)
状況 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
---|---|---|
トイレが使えない | 20% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
エアコンが作動しない | 5,000円 (1ヶ月あたり) | 3日 |
テレビなどの通信機器が使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5〜50% | 7日 |
③退去時の原状回復ルール
【 退去時の原状回復ルール 】
- 家具設置によるフローリングの凹み
- 冷蔵庫の後部壁面の汚れ・黒ずみ(電気焼け)
- ポスターなど貼っていた際の、通常の大きさの画鋲穴
- タバコのヤニによる変色・臭い
- 飼っていた犬や猫による柱・壁の傷や汚れ
- 物を壁に当ててしまった際に発生した穴
旧民法
借主は退去する際に原状回復義務があります。ですが、原状回復義務の範囲が曖昧でした。そのため、トラブル
新民法
経年劣化などもあるあめ完全な状態に戻すことは難しいので、原状回復義務の範囲が法的に以下のように明確化されました。
- 〔回復義務なし〕①・②・③
-
経年劣化や損耗の対象となるため、借主の負担はありません。
ねね画鋲の穴を負担しなくていいという事実は多くの方が知らないのではないでしょうか!
- 〔回復義務あり〕④・⑤・⑥
-
生活を通常と認められないため、借主負担となります。
退去時に発生する修繕費の減額ポイント
経年劣化には壁紙・フローリングや畳床(畳は違います)の凹み・設備機器も含められます。
賃貸人・賃借人の修繕分担表は下図に載せておきますが、壁紙・フローリング・カーペット・畳床は経年劣化と認められ、6年で価値が1円となるのです。
もちろん、居住年数で減額の対象にもなります。3年経過で半額なと・・・
実は、これを知っている知らないで敷金のお金の戻ってくる可能性が高くなります!
〈例〉100%の修繕費で12万円掛かるとします。
- 居住年数3年:6万円(50%)
- 居住年数4年:4万円
- 居住年数6年以上:1円
もちろん、状況によっては退去のタイミングは人それぞれになりますが、結構違うと思いませんか?
そして、やはり重要な事は契約する内容を確実に確認する事です。契約してしまった後では、取り返しがつきません。
退去する際、入居時と同様にするなど書かれていたら・・・相当な金額になります。笑い事では済まされません。
私たちの事例
私自身が聞いた話ではありますが、ガイドラインを知らないで居住年数8年にて退去した際高額な原状回復費を請求された人がいました。
退去する状態を見た訳ではありませんが、タバコも吸わない人で本人的にも穴などなく綺麗な状態だったとの事。(詳細は分かりませんが特約があったのかもしれません)
私達が退去する際は、旦那が10年間住んでいため引っ越しの際、洗濯機の取り付け部分の部品を破損させてしまったのと、後付けクーラーの撤去費用で約1万円でした。
もっと掛かると思っていたので助かりました・・・!!
さらに、賃貸人である大家さんがかなーり優しい人で新築祝いという事で退去費用以上のお祝いをして頂きました。大家さんの当たり外れもあるのかもしれませんね。
敷金0円物件
余談ですが、現在敷金『0』物件も増えているそうです。理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 初期費用が高い事で入居が決まりにくい。
- 敷金を払う・払わないの差別化防止。
- 賃貸借契約に関するルール改定による世の中の流れ。
(敷金について、賃料の滞納・原状回復ガイドラインで定めるもの以外は、原則敷金は返却と改めて定めた。)
本当かどうかはわかないので、余談程度にしておきますね。
なので、原状回復する際は基本的に借人が入居した時に払った敷金で賄われます。
まとめ
ちなみにこの記事は旦那が作成したもので、読んでみると初めて知るようなことばかりでした。
特に画鋲で穴を開けても、退去する際のお金が必要ないことが衝撃的でした。(大きな穴は別ですが・・・)この事実を知らない方が多いのではないでしょうか。
まだまだ知らない人が多いと思うのでこの記事をきっかけに多くの方に広めていただきたいと思います。
参考になったのなら記事をシェアしてくれると嬉しいです!
この記事で主に伝えたかった事
- 賃貸住宅における原状回復の費用負担をめぐるトラブルを防止するために作られたのが「原状回復ガイドライン」
- 原状回復では「賃借人(住んでいる人)が借りた当時の状況に戻すことではない」と明確されている
- ただし、契約時の特約がある場合は費用負担の可能性がある
- 2020年4月1日より民法改正された
- 壁紙・フローリング・カーペット・畳床は経年劣化と認められ、6年で価値は1円となる
- 退去費用に関する詳細はガイドラインを確認する事
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